デザイン思考に関する書籍や文献を辿って内容を確認する度に理解した気分になるけど、実際に言われているような思考プロセスを辿って解決するケースってそうそうない。つまり分かった気になっているけど、本質的な理解に至っているかが不明である。

それでもここに自分の知る限りを示してみようと思う。そのフィードバックを得ることはデザイン思考のプロセスとして必要なことのはずだから。

1.厄介な問題を解決する

デザイン思考が特に有効なのは「厄介な問題」を解決するときである。厄介な問題とは、問題と解決方法のどちらも不明瞭な状態の問題を指す。問題が不明瞭な問題ってなんだよ、と思うところはあるが、要求が不明瞭だからこそ、問題の特定、定義のために多くの時間とエネルギーを必要とする。これと対義を成すのが、いわゆる簡単な問題。こちらは問題がハッキリしているため、解決までの道筋さえつければ、解決する、ということだ。
すっごく単純化すると、

  • 厄介な問題 数学のミレニアム懸賞問題みたいな問題
  • 簡単な問題 ある半径rの円の円周の長さを求めるみたいな問題

ということでいいかもしれない。

2.デザイン思考が求められている

今の時代は「VUCAな時代」と言われている。VUCAとは、

  • Volatility(変動制)
  • Uncertainty(不確実性)
  • Complexity(複雑性)
  • Ambiguity(曖昧性)

の頭文字を取って作られた単語であり、自国を震源地としない世界危機に代表されるグローバル化や、IT技術の発展を起因とした新しい利便性を享受した結果、個人の嗜好性の多様化によるビジネスの変革など、想定外の事態が次々に起こる時代、ということを表している。
「思いでの残し方」で例にとると、

  • 2020年代  スマホでの写真、動画撮影
  • 2010年代  スマホ黎明期、コンパクトデジタルカメラ終わりの始ま
  • 2000年代  コンパクトデジタルカメラ全盛期、フィルムカメラの終焉
  • 1990年代  レンズ付きフィルム(使い捨てカメラ)全盛期
  • 1970年代  フィルムカメラの大衆化
  • 20世紀前半 白黒写真、写真館での撮影
  • 17世紀くらい 宮廷画家による肖像画の作成
  • もっと前   壁画とか

詳しい歴史は別のところで調べてほしいが、上記からわかることは、

1.カメラ技術の確立は多数の人に「思いでを残す」という体験を提供した
2.カメラ技術はフィルムからデジタルに変わり更にデバイスも変わってる
3.思いでの残し方の方法が変わるスピードがどんどん早くなってる

一旦デバイスが確立されるとそれをもっと便利にしよう、という技術がどんどんでてくる。フィルムカメラだと12枚撮りから36枚撮りのフィルムが出てきたりとか、デジカメになると更に大きな記憶容量だとか。けれども一旦新しいデバイスが覇権を取ると、以前のデバイスは隅に追いやられることになるのだ。

つまり、今の技術、方法はもちろん追う必要があるけれど、次のデバイス(時代)を無視しているといつの間にか取り残されてしまう、更には次の時代がやってくるペースがどんどん早くなってる(VUCAの時代)から、デザイン思考を身に着けよう、ということだ。

3.デザイン思考の在り方について

デザイン思考自体は、1987年から存在する歴史のある言葉であり、そのマインドとプロセスも結構明確に定義されている。

マインド

  • ユーザーファースト
  • 多様性
  • アジャイル
  • 常識にとらわれない

プロセス

  • 共感
  • 定義
  • アイデア
  • プロトタイプ
  • テスト

※プロセスはどのタイミングでどのプロセスに戻ってもよく、それを延々と繰り返す。

この、しっかりと定義されている、っていうのが多分くせ者で、このプロセス通せばいい結果でるんだよね、って考えたら負けっぽい。大事なのはむしろマインド。ここさえしっかり理解できていればプロセスは忘れても多分大丈夫(言い過ぎかもしれない)。

よりよいものを顧客に提供しようと思うならば、顧客に徹底的にヒアリングを行い、顧客でもさえも自覚していないニーズを拾い、それを形にするために、何度でも作り直し、ようやくできたと思ったら、新しい技術も出てくるから、また最初から繰り返す。これは確かに終わりのない取組である。

4.デザイン思考って必要?(だいたいまとめ)

今の世の中が「VUCAな時代」だとしても、そこにある問題は「厄介な問題」だけではない。当然のように「簡単な問題(ちょっと難しい問題とかもあるだろう)」も存在している。そして「簡単な問題」の解決は現在の技術で解決できる。そこにデザイン思考は必要とされていないし、現在多くあるのはこちらの問題だろう。だからこの考え方も必要とされている。

しかし、先に見てきたように、我々の世界はグローバル化とIT化、もしくはほかの要素も理由として、急激にその姿を変化させている。変化するとわかっているのだったらポジティブにそれを捉え、みんなで明るい未来を想像していけばいいのかな、と思う。

自社や自業界の知見だけでは、たどり着けない境地がきっとある。我々は新しい技術を楽しんで手に入れることができる集団だし、そのアジャイルマインドを世の中に提供できたら、といつでも思ってる。一緒にオープンイノベーションしてみよう、という方々大募集してます!